先の見えない時代への茶道からのヒント

千里同風 身分が離れていても皆、同じ風を感じる

「こころの時代への茶の湯からのヒント」
というテーマの、茶道の先生のお話をパリに聞きに来ました。
表千家茶道教授 中澤宗寿先生によるものです。
トゥールーズの大学でも講義をなさっているそうです。

当日の講義は基本的には日本語で行われるものでしたが、
フランス人の方も何人かいらっしゃいましたので、
所々、英語も交えて説明してくださいました。

表千家茶道教授 中澤宗寿先生 2023年2月13日講義 パリ

なぜこの講演に興味をもったのかというと、
茶道の世界に触れてみたいと思いたから、
茶道から見た日本の美意識・哲学・自然観に
興味が沸いたからでした。

お世話になっているコミュニケーションのスペシャリストである
コーチの何人かに茶道をされている方がいらっしゃることや、
アメリカやフランス、日本でビジネスの最先端にいらっしゃる方で
茶道をされている方の存在が、
この講義に興味を持たせてくれたきっかけでした。

表千家茶道教授 中澤宗寿先生 2023年2月13日講義 パリ

茶道の歴史や、お茶事の流れ、
懐石や茶壷について
一通り説明くださったのですが、
端々に日本ならではの趣を感じました。

お茶事は美しさを求める場
ではないのだそうです。

お茶はPeace of mind(心の調和)の場。
自然と人との調和と敬意から
茶事後も余韻の残る、
茶事が生まれるということでした。

信長や秀吉、
掛物の四字熟語の説明には
井伊直弼の名が出てくるのも
興味深かったです。
武士の数だけ、茶道があるのだそうです。

目次

お茶は科学

先生によると、お茶は科学なのだそうです。
自然界との対話がお茶時に全部凝縮されているから、
というのがその理由でした。

例えば、お茶用のお湯を沸かす炭。
炭の形や数にそれぞれ決まりがあるのだそうです。
季節やその日の天候と対話しながら、
炭の置き方や角度、隙間を加減し、
丁度よいタイミングと温度で沸くように
調整していくのだそうです。
同じ状況は2度と無い、とおっしゃっていました。

『茶道』と『科学』
この2つの言葉が結びつくと考えたことが
今まであったでしょうか。

日本の美の集大成

茶席のお菓子一つとっても、
茶事の何日も前から、
季節や銘(お菓子の名前)を考慮に入れて
職人にお願いするのだそうです。
それもすべて、
味覚、視覚、聴覚、嗅覚、触覚の五感でもって
お客様をおもてなしするための心遣いなのだそうです。

日本の美意識の特長はこういうところにあるかもしれませんね
というお話でした。

美は目に見えるものだけにあるのではありません。
耳に宿る美の大きさを改めて感じました。

お茶事に飾る花も
意図をもって選ばれます。

写真は椿の例です。
季節に沿って選んだ椿の、
いまにも咲きそうで、且つ、
扱いに意識を向けなければ落としてしまいやすい蕾の状態を飾るのには、
茶事の始まりとされた戦国の時代に、
武士である各々への戒めの意味も込められたのではないか
というお話でした。

表千家茶道教授 中澤宗寿先生 2023年2月13日講義 パリ

今日の講義には、
きりんぐさという花と、
千里同風という掛物を
先生が用意くださっていました。

掛物も季節などに合わせて選ぶのだそうです。
人と人とが集う場、心を通わせる場である茶事に
重要な会話のきっかけを作る役割もあるのだそうです。

戦国時代の茶事は、
今でいう接待のようなものと例えてくださいました。

表千家茶道教授 中澤宗寿先生 2023年2月13日講義 パリ

茶道の心身の使い方を、
先行きの見えにくい今の時代にどう応用できるのか、
先生が講義を締めくくってくださいました。

「お茶は美ではなく調和。周囲への敬意と心遣い。」
「目的と手段が逆になっていないだろうか」
「手先で茶碗を持つと不安定で、周りにも不安を与える。
その解決策は小手先に陥っていないだろうか」
「安定と安心を与え、且つ、体本来の自然な力は腹(丹田)にある。
本来あるべき姿・想いはどこにあるか。」


一番最後のこれらの言葉に、私は心打たれました。
と同時に、私の今の選択と方向性の8割は間違っていないと
確信をくれた言葉でもありました。
あとの2割は、今もまだ答えの出ていない、
これから答えを出していきたい部分です。

もし間違っていたとしたら、感じたのは
「感動」ではなく「動揺」だったと思います。

表千家茶道教授 中澤宗寿先生 2023年2月13日講義 パリ きりんぐさ

生かされていて、選択できる

先生の講義にあまりにも心打たれて、
シャンパンを飲みたくなり、
客層も雰囲気もいい感じのブラッスリーを帰り道に見つけたので
気の向くままに入りました。

観光客カップル、
女性グループ、
男性一人、
大人のグループ…

次の日のアポの用意もしたかったので、
適度に込んでいて、
他の客との距離も適度にあり、
ウエイターの方は寡黙な感じなのが
心地良かったです。

表千家茶道教授 中澤宗寿先生 2023年2月13日講義 パリ


こうして私が海外で今でも暮らせているのは、
夫をはじめとした家族の存在があったからだと
感謝の気持ちも改めて感じた日でした。

先行きの見えない時代、
恐れの中にいると生まれるのは混乱であり、
混乱は恐れを助長します。

ですが、そういう時は一歩下がって物事を見るといいかもしれません。
「私たちは混乱の中では怖さしか選べない」
ということは必ずしもないからです。

怖さを多く感じても優しさを
混乱の中にあっても安心を
私たちは意識次第で選んでいくこともできるのです。

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