朝一番にお店で見かけ、
いいなと思った薔薇。
大抵いつも花を選ぶときは、
オールドピンクや白などの淡い色か、
オレンジなどの元気の出る色を選ぶことが多いけど、
伝統的で正統派の赤い薔薇もたまには悪くない。
先月、クリスマス前に、
エレガントな生き方をされている
フランスに住む日本人女性のお家にお伺いさせてもらった時、
暖炉の前にあるリビングテーブルに置かれた口の広い花瓶に、
真っ赤なチューリップがたくさん活けて飾ってあった。
「チューリップの季節ではないけれど、
クリスマス前だし、赤が素敵だと思って」
と添えてくれた一言からも、
おもてなしの心遣いが滲み出ていて
心を打たれた。その余韻かも。
自分が毎日触れるもの、自分がよく見るところこそ
年も新しくなったことだし、
今まで慣れ親しんだ色々なものを
マイペースに整理する。
洋服、下着類にはもう手を入れたので、
次、整理が必要だとしたらどこだろう。
自分が毎日触れるもの、自分がよく見るところこそ、
と思ったのは、メイク用品とメイク道具入れ。
メイクバッグは、フランスに来た頃、
当時好きだったメイクブランドからの
いただきものを使ってきた。
「このメイクバッグ、いいね!どこで買ったの?」
と友人に聞かれるくらい、
大容量で、
仕切りが中央にも内側面にも蓋の内側にも、
それから外側にもついていてとても機能的で、
汚れたら水でジャブジャブ洗えるところもよかった。
当時は、フランスに来て初めて、
正社員の社長アシスタントとして日系企業に採用された頃だった。
通勤に車で片道1時間は最低でもかかる職場だったけど、
フランスで初めての安定した仕事で、
会社の中に目指していた役割があったから、
フランス人上司に嫌われないようにとばかり考えていたところもあった。
一方で、
上司は今のポストの先に展望を見れているのか、
上司は今の組織の立ち位置で疑問や不満を感じることはないのか、
現地採用された立場だからこそ、
現地職員の上司のような企業にとって優秀なメンバーには
見えない壁が存在しないことを願う自分もいた。
それくらい、今まで出会った人の中で群を抜いて、
ビジネスセンスに長けた上司だった。
当時の私生活では、子供が生まれたばかりで、
18時すぎに会社から帰宅したら夕食を作り、
夕食を食べるのは20時で、
食後に子供の世話をするとあっと言う間に21時になる毎日。
土曜日の午前中は、混雑のスーパーでする買い物でつぶれる。
毎日くたくたで、周囲の生活に支配されていた20代後半の私には
多少モノを色々入れたところでも大丈夫なスペースがある、
汚れても汚れてなくても気にならない黒の、
ざっくり扱える化粧バッグが最適だったんだろうと今は思う。
気が付いたらこのメイクバッグとは10年以上一緒で、
ほころびが目立ち始めたのがこの2~3年。
きちんと新しいメイクバッグを探さなければ、
と思って、その数年は結局何もしないまま、
あっという間に過ぎてしまった。
振り回されない自分をつくるには
一応、一度は検索をかけて、
めぼしいものを見つけていたけれど、
結局その時は、
「まあ、またそのうちに…」
と注文には至らなかった。
細部にしっくりこなかった。
インターネットで見かけたメイクバッグには、
細部にしっくりこないわりに、
明らかに傷んだものを自分に使うことに
違和感を感じていない心の状態だったことに
ようやく違和感を覚えたのが、今年だった。
改めて色々、モデルを見ているうちに、
容量、形、色、素材…
やっぱり何かが違う。
今までの代わりのものをさがしていたが、
今までと同じタイプ、同じ色がしっくりこない。
2019年に起業して、
自分のサービスや、
これからの生き方を考える
出来事や時間が増え、意識的にも増やしてきた。
そして今のところ望むのは、
時間を重ねるたびに、
洗練されたり、
絆が深まったり、
より理解しあったりできる
自分や他人やモノとの付き合い方を
これからはもっと増やしていくこと。
だからこれからのメイクバッグは、
今までのとはまったく違うタイプのものが
これからの私にぴったりな気がした。
生きていると度々、
今まで握っていたものを根本的に手放す時期が来る。
手放すか手放さないかは自分で選べるが、
それには、
「すべては自分で選べるということを知っている」という前段階が必要で、
自分のことを環境や他人に委ねているうちは、
それにはなかなか気が付けない。
環境や他人に自分を委ねることによって、
得している自分がどこかにいるからだ。
振り回されない自分をつくるには
自分の中の違和感を丁寧に拾い、書き出し、
どうしたいかも書き出す必要がある。
書き出すのが苦手なら、人に話してみるのでもいい。
思っていることを文字や言葉で外に出すと
不思議と整理されること、
客観的に見えてくることがある。
嫌なことはいくらでも言えるのに、
欲しいものは出てこないことはよくある。
欲しいものを挙げるには、
嫌なことを全部吐き出す必要があるのかもしれない。
今までは人から丁寧に扱われることを
心のどこかで望んでいた。
でもこれからは自分を丁寧に扱う自分を選ぶ。
新しいメイクバッグにはこれを選んだ。
有名な高級メゾンをイメージさせるオレンジと、
金具は、肌に馴染むからという理由でアクセサリーに選ぶことも多いゴールド。
バッグの素材は、本当は本革だと理想的だったけど、
それでも、丁寧に扱いたくなる皮調のテクスチャー。
中はスペースも仕切りも必要最小限、
だから本当に必要なものだけを
丁寧に選んで収める。
最近メイクのポイントに試しているのはアイライン。
それから、それを活かすためのマスカラ、チークとリップ。
ファンデーションはもう5年以上も前にやめた。
「こういうメイクが自分っぽい、そして似合う。」
と言えるようなメイクを追求していけば
必然的にシンプルになるはずで、
そうすれば生きるのも楽になりそうだ。
そういうのが理想だ。
必要最低限のメイク道具だけにしても、
今のところ、バッグの中は既に一杯。
あまり出番がないのに、
どうしても手放せなかったディオールの口紅だけは
私に赤い口紅をつけるきっかけをくれたお守りのようなもの。
それだけ特別に妥協して、入れておくことにした。
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